スペインの首都マドリードから北西に50㎞ほどの郊外には、王立サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル修道院という雄大な修道院があります(以下、エル・エスコリアル修道院)。広大な敷地内とその周辺にはハイキングコースもあり、美しい景色に心を奪われます。今回は、エル・エスコリアル修道院とその周辺のハイキングコースについてご紹介します。
エル・エスコリアル修道院とはどんな建造物?
エル・エスコリアル修道院は、広大な宮殿、修道院、博物館兼図書館を備えた宗教的複合施設です。左右対称の設計と、エレーラ様式と言われる外観の装飾を極力排除したシンプルな造りが、周囲の景観とマッチしています。反して、内装は豪華絢爛で、色彩豊かなフレスコ画が描かれた丸天井、スペインを代表する画家エル・グレコなどの多数の傑作、貴重な古代文書などを蔵書した図書館などが見所で、もはや修道院を超えた一大ミュージアムと言っても過言ではありません。
エル・エスコリアル修道院の歴史とは
エル・エスコリアル修道院は、スペインが最も繁栄した時代の国王であるフェリペ2世の命により、スペイン国王の墓所として、また同時に反宗教改革の研究目的として建築されました。フェリペ2世が父カルロス1世(カール5世)から国を受け継ぎ、国王に即位した翌年、スペインは長年の戦いの末フランスに勝利します。勝利に感謝を表すため、一流の芸術家やファン・デ・エレーラなど3人の建築家が携わり、1563年から1584年の21年を要し完成させました。
修道院周辺のハイキングコースで雄大な自然を体感
修道院周辺には、景観を楽しみながら散歩できる、片道5キロのハイキングコース「El Bosque de la Herreria(ボスケ・デ・ラ・エレリア)」があります。首都マドリードからこの街までは、バスなら1時間、電車でも1時間ほどで到着し、エル・エスコリアル駅がハイキングのスタート地点となります。まずは20分ほど歩いてエル・エスコリアル修道院行き、そこからグアダラマ山脈の裾野に広がる樫の森の中を進みます。木々の色合いや鳥のさえずり、大地を踏みしめる感触や音、樫の匂いなど、雄大な景観と自然をお楽しみください。
絶景ポイントを楽しみながら最大の名所「フェリペ2世の椅子」を目指す
途中いくつもの絶景ポイントを通過しながら、修道院を見下ろす小高い丘の上にある、「フェリペ2世の椅子」を目指します。目的地終盤、大きな岩場を登っていくと切り立った岩の広場となっていて、その中に登場するのが、「フェリペ2世の椅子」と呼ばれる岩です。スペイン帝国最盛期に君臨した偉大なる王が、椅子の形のように切り込んだ大きなこの岩に座って、修道院建設の進捗を眺めていたと言われています。是非ここでは椅子に座り、王になった気分で最高の景色を堪能したり、スペイン帝国の興亡に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
広大な自然と歴史を感じながらハイキングをしてみよう
今回は、スペインの世界遺産エル・エスコリアル修道院と、自然と景観を楽しむハイキングコースについてご紹介しました。五感に染み渡る豊かな自然と空気を感じながら、遠方に望むエル・エスコリアル修道院の歴史に触れるハイキングコースです。世界遺産とハイキングが一度に楽しめ、森林浴でリフレッシュもできるエル・エスコリアルは、素敵な旅の思い出になることでしょう。